先輩就農者に聞いた就農後のリアル就農ロールモデル
ロールモデル:08吉田 仁さんの場合
吉田 仁さん
出身:小野町現在の経営状況
- 収益
- 面積
-
- ハウス20a(7棟)
- 露地8a
- 設備
-
- 種まき機
- 軽トラック
- トラクター
- ハウス
- 軟弱野菜調製機
- スプリンクラー灌水
- 雇用
- パート4名を雇用(午前半日勤務・収穫に従事)
IMPETUS就農のきっかけ
実家は小野町でコメを栽培する兼業農家です。将来、その土地を利用して、園芸作物で農業をしたいと考え、東京農業大学の短期大学部(当時)に進みました。卒業後はいろいろな作物の生産を経験するために、埼玉県美里町で多品目の野菜を生産する個人農家で4年間勤務しました。小野町の気候風土に適した品目を模索するなかで、経験した多くの品目の中から寒冷地で周年栽培でき、夏の暑さにも比較的強いコマツナをやろうと決め、埼玉県さいたま市のコマツナ専業の農業生産法人に転職して2年間勤務しました。本来なら辞める前提の人を雇用しないと思いますが、社長がわたしの熱量を受け止めて勉強させてくれました。現在も交流があり多くのことを教わっています。
PRE-FARMING就農前の動き
農業生産法人では、コマツナの栽培だけでなく、むしろ費用対効果などの経営面を学ばせてもらえたことが大きいです。しかし、都市近郊農業のやり方が中山間地で通用するかというと、厳しいことが予想できたので、独立就農スタート時は販路や梱包資材などが確保されている農協出荷で、コマツナを作ることに専念しようと考えました。Uターン就農する3か月前ごろ、小野町役場に新規就農予定であることを相談すると、管轄の農業普及所や農協の職員の方々と就農プランを話す場を設けてくれました。また、「青年等就農計画」の作成でもサポートしていただき、小野町初の認定新規就農者になりました。
AFTER STARTING就農後
収益 | × |
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面積 |
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設備 |
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雇用 | - |
露地畑でコマツナの周年栽培をスタート
畑の回転数を上げることが課題
知り合いに農地を借りてコマツナの露地栽培を始めました。周年栽培は、同じ畑で何回転させられるかが肝になります。小野町では4~5回転できる計算です。播種から収穫まで、夏は約28日間、冬は約100日かかります。冬場の回転数を上げるためにはハウスが必要でした。翌年度に向けて、国の農業次世代人材投資資金(経営開始型)(現:新規就農者育成総合対策事業(経営開始資金))を受ける準備を町や普及所のサポートを受けながら進めました。就農1年目は収益にならないとの覚悟で、雇用就農の貯蓄で生活しました。結婚して子どもが生まれるタイミングでの就農、かつ地域の期待もあり、プレッシャーのかかるチャレンジでした。
収益 | ○ |
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面積 |
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設備 |
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雇用 | - |
青年等就農資金でハウス3棟を建設
周年栽培を軌道に乗せる
実家の田んぼの一部を畑地に転換してハウス3棟を建てました。農業次世代人材投資資金のほか、青年等就農資金を利用して無利子の融資を受けました。冬場は風が強いのでハウスの補強をしっかり入れ、井戸水を利用したスプリンクラー灌水を導入しています。ハウス建設と同時に種まき機を従来の簡易型からバッテリー式に替えました。重量50kgのローラーで鎮圧することで土壌水分量が上がり、発芽力が高くなります。暑さや寒さに合わせて品種をローテーションし、連作障害の対策として土づくりをしっかりしています。土壌分析をしてバランスを見ながら施肥をするなど栽培体系も確立してきました。
収益 | ◎ |
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面積 |
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設備 |
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雇用 | パート4人 (午前半日、収穫に従事) |
ハウス4棟を追加して経営規模を拡大
安定生産で首都圏への販路を確立
先輩農家からハウス4棟を譲り受け、全7棟、面積20aでコマツナ周年栽培をするようになりました。販路はJA出荷と市場出荷(郡山市)です。市場の開場に合わせて週5日、午前中はパートさんにコマツナを収穫してもらい、午後はわたし一人で出荷調製と箱詰めをしています。周年で安定的に生産できることで農協経由で引き合いがあり、東京の市場にも継続的に出荷しています。包装フィルムの表面には吉田農園のシールを貼り、裏面には小野町の紹介文を入れ、ロゴ入りのダンボール箱で出荷し、小野町産のコマツナをPRしています。
OBJECTIVEこれからの目標
自営就農8年目になりました。農地整備事業の担い手に選ばれ、ハウスの隣に80aのまとまったほ場を得て、今年新たにコマツナの露地栽培を始めました。作付けを徐々に拡大しつつ、年間の作付回数を増やしていきたいです。地方でしかできない農業をやりたくて、現在は足場固めをしている時期。将来、コマツナ周年栽培を軸に生産を人に任せられるようにして、常時10品目で移動販売の八百屋をやることが個人的な目標です。ただ自分だけ経営がよくても日本の農業はよくならないので、食料生産に従事する人づくりまで担えるように成長し続けたいと思います。