先輩就農者に聞いた就農後のリアル就農ロールモデル
ロールモデル:07田中 圭さんの場合
田中 圭さん
出身:喜多方市現在の経営状況
- 収益
- 面積
-
- ハウス18棟
- 設備
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- ハウス
- 作業小屋
- 自動アスパラガス選別機
- かん水設備
- 雇用
- パート10名
IMPETUS就農のきっかけ
大学で林業を学んだ私は、住宅メーカーに就職しました。転勤や部署異動が頻繁にあるサラリーマン生活を送る中、このままでは結婚や子育てを含め、自分が思い描く人生設計を実現することが難しいと考えるように。そんな時に頭をよぎったのが農業への憧れです。高校時代から、いつか農業で生計を立てたいと考えていた私は、農業を仕事にしたいという思いが日に日に強くなっていきました。家が好き、建築が好き、というマインドで仕事に向き合う同僚の仕事ぶりを見て強く感じたのは「好きには勝てない」ということ。自分にとってはそれが農業でした。
PRE-FARMING就農前の動き
農業をやるなら地元・喜多方市と考えた私は、Uターン就農を前提に埼玉県の農業法人に転職。約5年間、白菜や玉ねぎの栽培に携わりながら農業経営や雇用についてしっかり学ばせてもらいました。同時進行で喜多方市に何度も通い、市の担当者に新規就農者向けの支援制度や補助金のレクチャーを受けました。栽培品目は、喜多方市で産地が形成されているアスパラガスを選択。アスパラガスの生態はまだ解明されていない部分も多く、面白いと感じたことがその理由です。Uターン後、アスパラガス栽培のパイオニア的存在である“師匠”の農園に1年間従事。独立就農に向けた準備を進めました。
AFTER STARTING就農後
収益 | × |
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面積 |
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設備 |
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雇用 | - |
定植後、2年目からの収穫になるアスパラガス。
国や喜多方市独自の支援施策に支えてもらいました。
国の農業次世代人材投資資金(経営開始型)(現:新規就農者育成総合対策事業(経営開始資金))や喜多方市独自の新規就農者支援施策を受け、ハウスやかん水設備などを整えました。アスパラガスは株を定植してから収穫まで1年を要するため、2年目から収穫が始まります。初年度はハウスなど設備投資がかかるため、農地の賃借料やハウス資材、園地整備の補助は本当にありがたかったです。「その年の管理が翌年の収穫の答えになる」これは師匠の言葉。独立就農後も土壌や株の管理のアドバイスを受けながら翌年の収穫に備えました。アスパラガスの性質上、1年目は収益に結びつきませんが、管理の大切さをしっかり学んだ、実りある1年でした。
収益 | ○ |
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面積 |
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設備 |
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雇用 | 2人 (主に収穫時) |
5棟のハウスで生育不良が発生。土壌との相性が悪いと判断し、ハウスを別のほ場に移設することを決意。
素早い判断が経営安定につながりました。
2年目を迎えた年に、2か所のうち1つのほ場でアスパラガスが思うように生育しない問題に直面。初年度の11棟から6棟増設したものの、そのうち5棟のハウスで生育不良が発生。原因を探るも決定的なことはわからず、土壌との相性が悪いと判断し、栽培ほ場を変えることを決意。1ヶ所に集約をする作業を数年かけて行いました。ハウスの移設作業は大変でしたが早い判断が後の経営安定につながったと分析します。雑草の除去や立茎管理、追肥などの管理を徹底し、収穫後はJAの共同選果場へ。手間がかかる選果作業を委託できることで規模を拡大することができました。
収益 | ◎ |
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面積 |
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設備 |
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雇用 | 4人 (主に収穫時) |
アスパラガスの商品力の強さを実感。
販路が広がったことでハウス棟数が減少しても目標を達成することができました。
ハウス移設作業があり、一時的にハウスの数は減少しましたが、就農から3年目で就農計画の目標を達成することができました。要因としては高品質な喜多方市のアスパラガスは値崩れしにくく、高額で取引されることに加え、管理を怠らなかったことだと思います。また、商品力があるアスパラガスのため、JAのほか、卸業者を通じた関東圏の飲食店への販売や贈答品など複数の販路を持てたことも達成できた要因の1つです。ほぼ紹介で販路が広がったことに、改めてアスパラガスの商品力を感じました。
OBJECTIVEこれからの目標
就農6年目を迎えた現在の収量は年間9トンと、収穫量、経営共に安定しています。それに伴いパートさんを収穫以外でも雇用することで、作業時間がコントロールできるようになりました。ここまでこられたのは喜多方市や周囲のベテラン生産者のサポートのおかげです。その恩返しのためにも今後は雇用の創出や担い手育成にも尽力したいと考えています。その第一歩が認定農業者になることです。その後はGAP取得を目指し、新規就農を希望する方の研修受け入れ農家になることが目標です。地域の財産である農業を次世代にしっかりつないでいくと同時に、需要に対して供給がまだ追いついていない喜多方市のアスパラガスを、新たな担い手を育てることで地域全体の規模拡大につなげていきたいと考えています。