interview先輩インタビュー


18年間、全国展開する大手チェーン店でサービス業をしてきた。店長も長年務め、任されているお店が、接客1位に選ばれたこともあった。やりがいがある職場だった。しかし、“自然の中で動物を育てたい”という思いがずっと心の奥底にあった。
福島県石川郡石川町にある『有限会社鈴木畜産』に就農して2年目の酒井義朝さん。未経験で畜産に携わり、まだ覚えることは山ほどあるが、毎日牛のペースに合わせて過ごす時間が心地良いと語る。「長年勤めた会社を辞めることに勇気は必要だったが、挑戦したいという思いの方が強かった。もともと自然と動物が好きで、体を動かすことも好き。また福島の農業や畜産には、後継者問題など多くの課題があることを知り、何とか力になりたいと思うようになった。今は毎朝牛に会えることが嬉しく、全ての仕事が楽しい。天職に出会えたと感じている」。

酒井さんが勤める鈴木畜産は、牛の疲労回復とストレス軽減のために、はちみつを与え育てている。「石川はちみつ牛」は、全国でも高い評価を受けている。酒井さんの現在の夢は“日本一の牛を育てる”こと。「石川はちみつ牛」の美味しさを多くの人に広め、評価でも日本一を取りたいという。「ここで育てるのは約2年間。サシも綺麗で美味しい肉と評価されたということは、牛もストレスなく過ごせて、幸せだったということ。だから牛のためにもこの夢は叶えたい」こう語りながら牛たちに向ける眼差しはとてもあたたかい。
酒井さんは、雇用就農という道を選択したが、今後も独立することが目標ではないと語る。「私がそうして頂いたように、新人に技術や仕事の楽しさを伝え、その人が独立することを応援する役を担いたい。そのことが福島の農業・畜産を支えていくことになる」と笑顔で語ってくれた。
牛への愛情、純粋に仕事が楽しいという思い、福島の農業・畜産を支えたいという思い。全ての思いが強く、真剣で、牛にも伝わっているだろう、きっとこの夢は叶うと感じずにはいられなかった。